絵本3巻シリーズ『同級生は外国人〜多文化共生を考えよう〜』 |
2018-04-10 Tue 17:11
久しぶりの投稿です。
私が監修を務めた、3巻シリーズの絵本 『同級生は外国人〜多文化共生を考えよう〜』が、 2018年1,2,3月に続けて出版されました。 対象は、小学校高学年〜中学校あたりでしょうか。 監修はとても難しく、悩んだ部分が多かったです。 ![]() 私も「とみちゃん先生」として本文に登場しています。 ![]() そして、第3巻の最後に、大人向けのあとがきを書きました。 ここにそれを転載いたします。 関心のある多くの方たちにこの情報が伝わり、 大いに活用していただけたら幸いです。 <この本を読んで下さる大人のみなさまへ> この絵本の3巻を通して、「違い」の背景を知り、それを日本に合わせることで解決するのではなくどのように調整していくかで、子どもたちのコミュニケーション力を高め、相手を思いやる気持ちを育み、想像力や創造力という大切なことを学ぶ機会になるということを感じていただけたら幸いです。 まずは違いを知らなければ始まりませんし、それを理解しようとするプロセスで、様々なことに気づかされ、混乱を怖れず違いとどのように折り合いを付けていくのかという知恵を出し合うことで、豊かな社会への可能性をさぐることが大切だと思っています。 またそこから、「多文化」は外国につながる人たちだけではなく、そもそも誰もが一人ずつ違うということにも思い至り、民主的で成熟した社会の実現に近づくのです。そのプロセスそのものが、「多文化共生」なのではないでしょうか? 外国につながる子どもたちの存在を、特別扱いをするのではなく活かすことで、さまざまな可能性が見えてくるはずです。それは、子どものまわりにいる大人たち次第だと思っています。私自身も、受け入れる側の社会に住むマジョリティの意識こそを変える必要があると思い、そのために、学校現場の共感を得て、子どもたちから意識を変えていきたいという趣旨に賛同し、この絵本の監修を引き受けました。 もちろん、この絵本で紹介している事例は、外国につながる人たちの状況のほんの一部です。どこの国にルーツがある人も、ひとりひとり性格も考え方も暮らし方も違い、とても多様であることは当然のことです。絵本の対象年齢を考慮すると、よくある事例として親が医療通訳に子どもを連れて行くことが子どもの負担になっていることなど、書きたくても書けなかったこともたくさんあります。用語も表現もひとそれぞれです。日本語に適切な用語がない場合もあり、あくまで取材をした方達の考え方や、いちばんわかりやすいと判断した言葉を使用しています。この絵本で、すべての外国につながる方の代弁をしようなどとしているわけではありません。くれぐれも子どもたちがひとつの国のイメージを決めてしまうことのないように、大人の方たちにはお願いしておきたいと思います。 日本も含めて、世界中で難民などやむをえない移動も含み、人の移動が活発になっています。しかし、新しく受け入れた住民への、もともと暮らしていた住民の支援が少しずつすすんだがゆえに、もとの住民が不公平感をもち、いつまで支援をするのだという不満が生じている時代になってきています。ヘイトスピーチやWEB上での差別的発言などが、それを裏付けているように思います。世界で起きているテロ行為なども、ある部分はその延長線上にあり、日本も決して関係がないわけではありません。 執筆をされた松島さんは、かなり精力的に取材に出かけ、あらゆる声に耳を傾け、関係者全員と時には議論を重ね、一緒に悩み続けました。私も含めこの本に関わった人たちすべてが、それでもこのような本が今の日本社会には必要だということを信じてできあがったものです。 どうか、大きな可能性につながる環境をチャンスと捉え、この本の言葉じりや細部にとらわれることなく、またある国について固定観念を持つのでもなく、むしろ、違うと感じられたことを題材にして、「多文化共生」という簡単ではないものをめざすためのきっかけをつくっていただきたい。せっかくの機会にフタをしてしまわず、新しい社会を拓く何らかの足がかりにしていただけたらと、心から願っています。 吉富志津代(とみちゃん先生) |
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